いじめ自殺を防ぐ
いじめ、そしていじめ自殺を防ぐために我々ができることは・・・
いじめ自殺があいついで起きています。
大切な子供たちをこれ以上死なせてはいけません。
精神科医樺沢紫苑が、「いじめ自殺」について、真剣に考えます。
私たち一人一人ができる、そして今からできる方法があります。
■1 マスコミ報道がいじめ自殺に及ぼす影響
■2 いじめられる子は、なぜ親に相談しないのか?
■3 校長先生の自殺問題について
■4 人と違うことは才能だ いじめ問題の本質を描いた映画
■5 「いじめをなくす」ことより重要なこと
今回の福岡のいじめ自殺では、被害者の親は子供がいじめに苦しんでいる 事実を全く知らなかったようです。 これだけひどいいじめが長期に続いていたというのに、親はそれ に気づいてなかった。これに対して、「親がいじめられている徴候に気づいてあげられれば、 こんなことにならなかった」と、両親に対する批判もあるようですが、 それは精神医学的にみると、間違った批判であると言わざるを得ません。
あるいは、「死ぬくらいなら、一度くらいは親に相談するべきだ」 「自殺するくらいなら、なぜ親に相談しないのだろう?」 と思う人もいるでしょう。
この「親に相談できない心理」というのは、非常に重要です。 子供の世界のことを大人の世界に持ち込みたくないという気持ち。 これは、子供の頃の自分を思い出せば、そういう傾向があったことは 理解できるでしょう。あるいは、親に告げ口したといって、いじめがひどくなる心配もあります。そうした子供独特の心理もあるでしょうが、私は「自殺予備状態の心理」 として理解します。
子供でなくても大人でもそうなのです。 自殺を深刻に考える人は、子供に限らず大人でも、その状態を人に知られま いと振舞う傾向があります。 例えば、ある中年の男性が仕事上の大きな問題を抱えてストレスに悩まされ ます。そして、自殺を考えはじめます。しかし、職場の人にその問題を相談することはありません。そして、妻にも「心配かけたくない」ということで、相談しません。 相談どころか、むしろ元気であるようにふるまうのです。 職場でも家庭でも。そして、ある日、突然自殺します。
妻は、夫の自殺の徴候に全く気づけなかったこと。 そして、「自分に一言も相談してくれなかった」ことを悲嘆し、自責の念に 悩まされます。 自殺予備状態の人は、ほとんど例外なく、「人に心配させたくない」 「人に迷惑をかけたくない」という気持ちに支配されています。したがって、自分が死にたいという気持ち。 のみならず、自分がうつ状態に陥って苦しい。それがどんなに苦しくても、 人に相談するのではなく、我慢してむしろ隠す傾向にあるのです。
「いじめ自殺」の場合も同じでしょう。いじめられて、いじめられて苦しくてつらい状態にある。どんなに苦しくても、人に相談することはなく、「親に迷惑をかけたくな い」と我慢するのです。 大人ですら、職場や家族に相談しない。相談できないというのに、いじめら れている子供が、学校や家族に相談するということなど不可能なのです。
その追い詰められた状況の複雑な心理を、まず理解していただきたいと思い ます。 いじめに限らず自殺の問題というのは、本人から相談されるのを 待っていては、完全に手遅れである、ということです。
自殺を考えている人は、このように「自分の状況を人に知られたくない」と いう気持ちを持っています。 一方で、「本当は自殺なんかしたくない」「今の状況を誰かに気づいて欲し い」「誰かに助けて欲しい」という気持ちも同時に持っています。 これは、アンピバレント(両価性)な感情といわれますが、「死にたいけど死 にたくない」というのが、「自殺予備状態の心理」としてほとんどの人に 存在します。
つまり、自分が死にたい。何かに悩んでいるということを、直接に相談する ことはまずないのですが、ささないな言葉の端々とか、ちょっとした行動とか、 何らかのヘルプのサインを出していることがほとんどなのです。
そうしたサインを見逃さずに発見してあげることが、自殺の予防ということ で極めて重要になってきます。 具体的な自殺のサインについては、非常に長くなってしまいますから、現在 執筆中の拙著の中で、かなり詳しく書いていますので、後日そちらを参考にし ていただきたいと思います。
「死ぬほど困っている状態なのに、誰にも相談できない」。
これは病的な心理状態なわけで、どんなに頭も良い人も、どんなにおしゃべ りで外交的な人も、自殺の予備状態に陥ってしまうとそのように振舞うわけで すから、個人や性格の問題ではないのです。
相談できない本人に罪は全くありません。 また、当事者が自殺徴候を隠そうとしている以上、それに気付けなかった 親を責めるべきでもありません。 ただ我々ができることは、自殺の予備状態にある人は、何らかの自殺のサイ ンを出しているので、それを拾い上げられるように、アンテナを張りめぐらし、 感度を上げるべきだ、ということです。
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